今回のテーマは、
賃上げ減税についてです。
政府が力を入れている賃上げ、
前々から赤字企業は恩恵を受けられないので
問題視されており、
是正策は考えられているようですが、
どの程度の企業が恩恵を受けられていないのか
日経新聞の記事よりご紹介します。
賃上げ減税、中小6割が対象外 赤字体質の脱却重要に – 日本経済新聞【この記事のポイント】・2024年度税制改正で「賃上げ促進税制」の拡充が論点になっている。・この税制はいつ始まり、どれくらwww.nikkei.com
現状の制度の問題点
現状の制度では、
以下の計算式のように
「賃上げした金額×15%」
法人税額や所得税額から
引いてもらえるというものです。
仮に
・前期の給与総額:100,000,000円
・当期の給与総額:120,000,000円
・当期の法人税額:10,000,000円
① (120,000,000-100,000,000)×15%=3,000,000円
② 10,000,000円×20%=2,000,000円
③ ①≧② ∴税額控除2,000,000円
まず、当期に賃上げした20,000,000円に15%を乗じ、
3,000,000円が算定されます。
次に、法人税額10,000,000円に20%を乗じ、
2,000,000円が算定されます。
これが、限度額となります。
要は税金が安くなる最高額という事です。
この結果、
この例では2,000,000円が
税金が安くなった金額となります。
見てお分かり頂けると思いますが、
この税制は、以下の要件を満たす必要があります。
・賃金が一定以上上がっている
・利益が出て、税金を納めている
この2点を必ず満たす必要があります。
以下は、関連記事です。
賃上げ税制の最新動向 – 広島市の中小企業専門IT税理士|スエナガ会計賃上げ税制の最新動向賃上げ税制の最新動向 | 広島市の中小企業専門IT税理士|スエナガ会計今回は、賃上げ税制の最新動向を日本経済新聞の記事よりご紹介します。 現状の制度と改正になる予定を紹介していきま今回は、賃上www.komachi-kaikei.com
日本にはどの程度、赤字会社があるか
そこで、先程の日本経済新聞の記事です。
記事の中では、中小企業の
61.9%が赤字法人となっています。
中小機構が発表する中小企業数は357万社。
ここから推定すると
約220万社程は、賃上げ減税の対象外となる計算です。
正直、これでは何のための税制か
期待する効果は得られません。
なぜ賃上げが必要か
では、なぜここまで賃上げを強く
推し進めたいのかですが、
以下の効果を期待するからです。
賃金上昇→所得増加→消費拡大→企業業績向上→賃金上昇
賃上げにより、
個人の所得が増え、
個人消費が拡大し、
企業業績が向上し、
また賃上げにつながる
という循環を作りたいからです。
しかし、足元では
賃金が上がったところで
物価高で上がった賃金以上の支出が必要だったり、
企業も原料価格高騰で
消費が拡大しても賃金に反映されない
という状況です。
好循環を生み出したいどころか
負のスパイラルが加速しているのが
現状で、思惑通りにはいっていません。
スタートラインは賃上げだけではない気が・・・
政府の政策では、
「賃上げ」を起点とした
経済の好循環を生み出したいという
思惑なのでしょうが、
・所得増加
・消費拡大
・企業業績向上
の政策の合わせ技が必要ではないかと思います。
所得増加
所得増加については、
近年「リスキリング」というワードを
頻繁に見かけるようになり、
企業へも副業を容認する動きが活発となっており、
所得増加への政策が見て取れます。
今後は、よりスピーディに
社会に普及してほしいものです。
消費拡大と企業業績向上
正直、この二つの政策は
あまり見受けられません。
この分野への積極的な
政策を期待したいところです。
従来は、このような状況での政策として
補助金や助成金など
いわゆるバラマキ政策も多いですが、
補助金や助成金は
・事務手続きが煩雑
・入金までのタイムラグ
が問題です。
私は、マイナンバーカードを活用した
実効性があり、利用者にも有効な
消費拡大に対する政策を政府には期待したい。
その為には、
行政がDX化に真剣に取り組むことが
大前提にはなりますが・・・
まとめ
今回は、賃上げ減税について
中小企業の現状と照らし合わせて
紹介しました。
賃上げに対する減税は
全く否定する気はありませんが、
対象者が限定的である現状は
あまり効果的とはいえません。
経済の好循環を生み出すためには
消費拡大を起点とした政策も
必須と考えます。
私たち一人一人の意識が
価格重視ではなく、
可能な範囲で国内企業から買うことも
消費拡大に一役買うのかもしれません。