さて、今回の題名(タイトル)ですが、
これは実際にあった社長との会話です。
利益が出ているから
会社のお金が減っているはずがない
と思っている中小企業の社長は、
以外に多いのが実情です。
でも、利益は出てても
会社にお金が残っていないケースって
結構多いんです。
そして、一番危険なのが
その状態に気付いていないこと
です。
今回は、
利益が出ているけど
お金が残っていない
その仕組みをご紹介します。
利益が出ているのに、お金が残らないメカニズム
さて、事業を行う際に、
事業でお金が増やしていく方法は、
利益を計上し続けることです。
ここで、まずは利益はどうやって計上されるかを
考えてみましょう。
利益は、以下の計算式で算定します。
売上 - 費用 = 利益
ちょっと、簡単な例を見てみましょう。
製造業を営んでいるA社
材料を1万円で仕入れ、社内で組み立てた従業員へ給料1万円を払い、
製品が完成。その製品を3万円で販売した。
まずは、利益から計算してみましょう。
売上 3万円
費用 1万円(材料)+1万円(給料)=2万円
利益 3万円-2万円=1万円
次に、お金の動きを見ていきましょう。
入金 3万円
支払 1万円(材料)+1万円(給料)=2万円
残ったお金 3万円-2万円=1万円
今回の一連の動きの中では、
1万円の利益を計上し、
1万円のお金を手にすることが
できています。
このように、単純に
利益=増えたお金
になれば、話は簡単なんですが、
そうはいかないのが、今回の問題の難しさです。
次の章では、
なぜ「利益=増えたお金」
にならないのか、考えていきます。
なぜ、利益とお金の動きは連動しない?
それでは、なぜ利益とお金の動きが
連動しないのか考えていきます。
それは、大きく分けて
次のような理由があるからです。
・入金や支払いのタイミングが違う
・利益では表せないお金の動きが加味されていない
では、ひとつづつ見ていきましょう。
入金や支払いのタイミングが違う
では、ひとつ仮説を立てて
考えてみましょう。
先程のA社について、以下のような取引だったと仮定します
7月 材料仕入れ、組み立て作業
8月 販売(製品の引き渡し完了)し、代金は翌月入金予定
9月 販売先から代金回収
この場合、お金の動きから考えると
以下のようになります。
7月 △2万円
8月 0円
9月 +3万円
7月に材料と給料の2万円が支払われ
9月に代金の3万円が入金されています。
実に、支払いから入金までの
タイムラグが2ヶ月
という事になります。
仮に、8月末が決算だったとすると
利益=1万円(3万円-2万円)
に対し、
お金=△2万円
となります。
利益が出ているのに
お金が残らない典型例となります。
実際の現場では、
このような一つの取引が
1年間で何百、何千、何万件と
連続して起こるため、
このような状況に気づくことが
難しくなっている要因です。
このように、先行的にお金が出ていく際に
あらかじめ用意しておくお金を
「運転資金」と呼びます。
企業は、この入金があるまでの間、
この「運転資金」により
経営を成り立たせ、
また次の取引へ向け
営業活動していくことになります。
利益では表せないお金の動きが加味されていない
前の項では、お金が動くタイミングについて
お話ししましたが、
実はそれだけではないんです。
もうひとつ、加味しないといけない
重要な要素があります。
先程紹介した利益は、
「売上-費用」でした。
勘のいい方はお気づきでしょうが、
そうです、決算書でいう
「損益計算書」という事になります。
企業が行う主たる営業活動は、
損益計算書を見れば、
状況が一目瞭然ですが、
お金の動きはそれだけでは把握できません。
実は、
・財務活動
・投資活動
が抜け落ちています。
以下で、解説します。
財務活動
財務活動とは、主に企業が行う
資金調達等です。
すぐに思いつくのが、
金融機関からの借入れでは
ないでしょうか。
実は、利益には
借入れの動きは加味されていない為、
お金の動きを管理する上では、
考慮に入れなければ、
実際のお金の動きとは
大きくかけ離れてしまう事になってしまいます。
話は少し脱線しますが、
時折、このような質問を受けることがあります。
「なぜ、借入の返済が必要経費にならないのか?」
という内容です。
実際、お金が減ったから、
必要経費に入れたい気持ちはわかります。
が、その質問者に次のような質問をします。
「銀行から借入れた時に収入計上しましたか?」
と聞くと、
100%「していない」と答えます。
損益計算書で計算する
利益は、
自身が売った物を収入に計上し、
それにかかった支出を費用として
計上して儲けを計算する仕組みです。
残念ながら、収入に計上していないものを
費用に計上することはできません。
あくまでも、借りたお金を
返しているだけで、
誰も何の利益も得ていません。
唯一、お金を貸してもらったお礼に
銀行へ利息を支払っていますが、
この利息は、お金を融通してもらった代わりに、
銀行へお礼としてあげるので、
支払利息として「必要経費」に
算入できるのです。
よって、借入金は
一時的にお金が必要な会社に
銀行が一時的にお金を融通しているだけで、
利息を除けば、
そこに損得は存在しないので
損益計算書には加味されません。
この借入金の返済は、
損益計算書には含まれていない事は、
必ず覚えておきましょう。
投資活動
次に投資活動ですが、
一番思いつくのは、「設備投資」かと思います。
先の製造業A社でも
材料の組み立てに必要な「機械装置」や
「工場建物」が存在していると思います。
このような設備に対し、
お金を支出することを
設備投資といいます。
この設備投資をした際ですが、
仮に機械装置を導入すると
機械装置の代金を支払ってお金は減りますが、
機械装置をすべて費用計上することはできません。
皆さんがご存じの
「減価償却」という方法で
損益計算書に少しずつ計上していきますので、
利益とお金の動きが一致しなくなります。
また、一度にまとまったお金を
用意できない場合、
金融機関から借入を行うことも
多いと思います。
このように、設備に要するお金のことを
「設備資金」と呼びます。
よって、企業が事業を営む際には
「運転資金」と
「設備資金」の
二つに分類することができます。
まとめ
今回は、利益とお金の動きについて
紹介しました。
企業が発展していくには、
利益を計上し続ける必要がありますが、
それにも増して
お金が枯渇しないよう管理する
ことも非常に重要です。
このお金の管理は、
利益を見ているだけでは
正しく把握できないことが
お判り頂けたと思います。
次回は、利益とお金の動きの把握と
正しいお金の借り方を紹介していきます。
次回のPartⅡもご期待下さい。