本日の日本経済新聞に紹介されておりました
2022年夏のボーナスについて、
全体で10.4%増加で
金額にして85.3万円とのことです。
最高金額の会社は
366万円だそうです。
なんとも、うらやましい・・・
と、羨んでもしょうがないので
今回は、前期より給与がアップした場合に
適用の可能性がある税制について
ご紹介します。
ガイドブック
最初に紹介しますが、
今回紹介する制度は、「中小企業向け」と
なりますので、大企業向けの制度紹介は
省略致します。
ガイドブックは、以下のリンクに
掲載されております。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin04gudebook.pdf
概要
まずは、制度の概要ですが、
中小企業者等が
前年度より給与等を増加させた場合に、
その増加した金額の一部を
法人税から税額控除する
制度となります。
適用ができる年度は、以下の通りです。
法人:令和4年4月1日以降に始まる事業年度
個人:令和5年分
適用ができる年度は、始まりの時期が決まっております。
例えば、12月決算の法人は、
令和4年4月1日以降に始まる
令和5年1月1日~令和5年12月31日
の事業年度から適用となります。
要件
要件を満たすか否かの判定は
以下の項目を確認する必要があります。
1. 中小企業者に該当すること
2. 給与の総額が1.5%以上増加していること
3. 給与の対象となる人への給与のみで集計すること
4. 助成金などは除くこと
5. 法人税・所得税の納税があること
それでは、ひとつづつ解説します。
1.中小企業者に該当すること
中小企業者とは、一般的には
資本金の額が1億円以下と
考えてもらればいいです。
ただし、大きな法人の出資を受けている場合、
対象外となるケースがあります。
2.給与の総額が1.5%以上増加していること
次の項目で説明します対象者への給与の合計額が
前年比で1.5%以上増加しておく必要があります。
よって、仮に前年の給与総額が1,000万円だった場合、
今年の給与総額が1,015万円以上だと
要件を満たすことになります。
なお、この増加率が
2.5%以上だと
さらに税金が安くなる特典も
設けられています。
3.給与の対象となる人への給与のみで集計すること
さて、この給与の総額についてですが、
誰の給与でもいいかというと
それは認められていません。
基本的には、国内で勤務している
その法人又は個人事業主の「使用人」(=従業員)で
賃金台帳に記載された人
となります。
使用人の中には、
パート・アルバイト・日雇い労働者も
含みます。
感覚としては、一般の従業員
と思って頂ければ、大丈夫かと思います。
よって、以下の人は、対象から除かれます。
・役員
・使用人兼務役員
・役員の特殊関係者(役員の身内)
・個人事業主の特殊関係者
など
上記のように、法人の役員や役員の身内などは
除かれることになります。
よって、期末近くになって
給与総額が前年比1.5%以上になりそうなので、
役員の身内である従業員のみ
給与をアップさせて要件を満たそうとしても
制限されるという事になります。
あくまでも、一般の従業員さんのみで
集計するという事を覚えておいて下さい。
4.助成金などは除くこと
基本的には、
前年の支払った給与総額と
今年の支払った給与総額とで
比較することになりますが、
国などから助成金を受けている場合は、
除かなければなりません。
以下にて、例をあげてみます。
支払った給与:前年1,000万円
今年1,100万円
助成金の額:前年 0円
今年150万円
前年の給与総額:1,000万円
今年の給与総額:1,100万円-150万円=950万円
前年比、1.5%以上増加していないので、適用なし
上記の例では、
単純に支払った給与のみでは、
前期から100万円増加し
10%の増加率となりますが、
今年は、給与に充てる為にもらった
助成金150万円があり、
助成金を除くと950万円(1,100万円-150万円)となり
前年より給与が増加していないことになります。
よって、給与に充てるための助成金がある場合は、
その金額を除いて、実質的に負担した金額のみで
増減率を比較することになります。
非常に注意が必要な事項ですので
事前に確認をしましょう。
5.法人税・所得税の納税があること
最後に、安くなる税金の金額ですが、
基本的には、
「増加した給与の金額 × 15%」
となります。
ただし、上限があり、以下の通りです。
法人税額又は所得税額 × 20%
上記の計算式のように、
いくら給与がアップしていても
納付する法人税・所得税が「0」の場合、
上限金額も0円となりますので、
税金は1円も安くなりません。
よって、所得が発生し納付する
法人税・所得税があった上で
給与がアップしている必要があります。
前提は、「黒字企業」である
必要があることを覚えておいて下さい。
では、以下で試算してみます。
増加した給与の額:500万円
法人税額:300万円
① 控除対象額:500万円×15%=75万円
② 限度額:300万円×20%=60万円
③ ①>② ∴60万円
上記の例では、
給与が500万円アップしており
その15%である75万円が控除できる金額
となります。
ただし、法人税額が300万円であり
その20%の60万円が控除できる限度額となり
結果としては、60万円が控除できる金額となります。
よって、納付する法人税額は、
300万円-60万円=240万円
となります。
まとめ
上記の例でも紹介したように
ただ、給与がアップしただけではダメで
法人税や所得税を納めていることも
要件となることから
事前の試算が非常に重要となります。
ただし、多くの要件をクリアできれば
上記の例でも60万円の節税効果があります。
また、上乗せ措置も用意されていますので、
賃上げを行った場合は、
早めに試算して適用可否の判定を
行ってみましょう。