贈与を検討する前に知っておきたい!贈与の基本と贈与契約書

相続・事業承継

今回ご紹介する内容は「贈与」です。

贈与は、近年、贈与に対する税制も大幅に見直され、贈与への需要も高まっていますが、思わぬ落とし穴も存在します。

今回は、贈与を考えている方が、贈与に迷わないよう、贈与の制度と注意点などを紹介します。

贈与とは?

贈与とは、ある人が何らかの財産(お金、土地、建物、株式など)を、見返りを期待することなく、相手に無償で渡すことをいいます。

この場合に、財産をあげる人(贈与者)が財産をあげる意思を表明し、財産をもらう人(受贈者)承諾(受諾)することで成立します。

◆民法549 条
「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」

贈与の特徴

無償性
 
贈与は、売買のように対価を伴うものではなく、一方的に財産が移転することが贈与の最も特徴的な部分です。

任意性
 
贈与は、法律によって強制されるものではなく、贈与者と受贈者の合意に基づいて行われ、あくまでも当事者間の任意となります。

生前贈与
 
生きている間に財産を贈与することを生前贈与といい、相続と異なり、贈与者は贈与した財産を取り戻すことは原則としてできません。

贈与を受けた場合には、贈与税が課税されます

贈与が行われた場合には、「贈与税」という税金が課税されます。

この場合に、贈与税の申告が必要なのは、贈与により財産をもらった人です。

よく間違って認識している人がいますが、贈与をした人(贈与により財産をあげた人)ではありませんので、注意が必要です。

贈与を行った場合の「贈与契約書」の重要性

贈与契約書は、贈与という行為を明確にし、将来起こりうるトラブルを未然に防ぐために非常に重要な役割を果たします。贈与契約書を作成するメリットは、大きく分けて以下の3つが挙げられます。

贈与の事実を証明する

税務調査への対応
贈与税の申告が必要な場合、贈与契約書は、贈与があったことを証明する重要な証拠書類となり、税務調査において説明を求められた場合でも、客観性を持って説明することができます。

相続時におけるトラブル防止
相続が発生した場合、贈与があったことを証明することで、相続財産の範囲を明確にし、相続人間での争いを防ぐことができ、相続により無用なトラブルが発生することを防止することが期待できます。

贈与が無効と主張されるリスクの軽減
贈与契約書を作成することにより、贈与の当事者間で合意していることが明確となり、贈与が無効と主張されるリスクを減らすことができます。

贈与契約書の有効性の証明には、以下のブログでも紹介した「確定日付」も有効な方法ですので、興味のある方は、読んでみて下さい。

https://note.com/embed/notes/n9ec8ac51c1c9

贈与の内容を明確にする

贈与財産の特定
贈与する財産の種類、数量、価格などを具体的に記載することにより、贈与の内容の誤解や後々のトラブルを未然に防ぐことが期待できます。

贈与の条件
贈与に一定の条件が設定されている場合(例えば、贈与を受けた者が一定の行為を行うことなど)は、その条件を明確に記載することで、双方の権利義務を明確にすることができ、トラブルの防止につながります。

贈与に関するトラブルを未然に防ぐ

贈与の意思表示
先でもご紹介しましたが、贈与により贈与契約書を作成することで、贈与者の贈与の意思と受贈者の受託の意識を明確に示すことができ、当事者の意思を明確に表示することができます。

贈与の撤回防止
贈与契約書を作成することで、贈与者が後から贈与を撤回することを困難にすることができますので、受贈者側も贈与の撤回を要求されることがなく、安心することができます。

贈与契約書の書き方

贈与により、贈与契約書を作成することの重要性はご理解頂けたと思いますが、その贈与契約書を作成する際に、必ず記載すべき事項がありますので、ここでは贈与契約書の必須記載項目を説明します。

贈与契約書に盛り込むべき必須記載事項は、以下の5つです。

① 贈与契約の締結日
② 贈与の履行日(実際に贈与を行う日)
③ 贈与財産の情報(金額や種類、所在や数量など)
④ 贈与方法
⑤ 贈与者と受贈者の住所氏名

画像

贈与契約の締結日

贈与契約の締結日ですが、贈与契約を結んだ日付を記載します。

贈与契約日とは、贈与契約が成立した日、つまり贈与者が財産を贈与し、受贈者がそれを受け入れたと合意した日を指します。この日付は、贈与に関する様々な場面で重要な役割を果たします。

この贈与契約を締結した日が、贈与の効力が生じた日となり、贈与契約が有効となります。

贈与の履行日

贈与の履行日とは、贈与が実際に完了した時をいい、贈与契約に基づき、贈与者が贈与の対象となる財産を受贈者に実際に渡したり、所有権を移転したりした日、つまり贈与が現実に行われた日です。
贈与契約日と混同されがちですが、両者は異なる意味を持ちます。

贈与における、税金の計算では、以下の相続税法基本通達では、書面を作成している場合は、贈与の契約の効力が発生した時となっています。

この基準日を間違えないように、注意しましょう。

◆相続税法基本通達1の3・1の4共-8 
相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。

(1) 相続又は遺贈の場合 相続の開始の時

(2) 贈与の場合 書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時

第1条の3《相続税の納税義務者》及び第1条の4《贈与税の納税義務者》共通関係|国税庁www.nta.go.jp


贈与財産の情報

贈与により、受贈者に贈与する財産の種類と金額や数量などを明確にします。

これにより、贈与者と受贈者での誤解を招くことを防止でき、トラブル回避が期待できます。

なお、上記の記載例では、現金の為、贈与財産の記載すべき情報は少ないですが、不動産や株式の場合は、所在や面積及び株数等の贈与により移転する財産の情報を詳細に記載するようにしましょう。

贈与方法

贈与により、どのように贈与を行うのかを記載します。

贈与税の申告時には、贈与の方法が問われることがあります。贈与契約書に贈与方法が記載されていれば、現金で渡したのか、振込を行ったのかなど、明確に判断することができ、税務調査の際にスムーズに対応できます。

また、贈与方法が具体的に記載されていることで、贈与が実際に履行されたかどうかの確認が容易になります。記載例では、受贈者の預金口座に振込を行うことになっていますので、受贈者の通帳に記帳されることで、贈与の有効性証明になります。

贈与者と受贈者の住所氏名

贈与において、贈与契約は、贈与者と受贈者という特定の個人間で行われる契約となります。よって、住所氏名を記載することで、誰が贈与を行い、誰が贈与を受けたのかを明確に特定することができます。


贈与の手続き方法

贈与後に行う手続きは、贈与した財産の種類や贈与税の申告の有無などによって異なります。一般的に行われる主な手続きとしては、以下のものが挙げられます。

贈与税の申告

申告の必要性
贈与された財産の価額が年間の基礎控除額を超える場合、贈与税の申告が必要となります(暦年贈与の場合)。

その他、相続時精算課税制度がありますが、今回は説明を割愛させて頂きます。

申告期限
贈与があった年の翌年の3月15日までが贈与税申告書の申告期限となります。

必要な書類
贈与契約書、贈与された財産の評価額を証明する書類などの贈与を証明する資料を添付します。

財産の名義変更

不動産の場合
贈与により不動産を取得した場合は、所有権移転登記の手続きが必要となりますので、所定の期日までに登記手続きを行うようにしましょう。

株式の場合
贈与により株式を取得した場合は、株式の名義変更の手続きが必要となります。株式の発行会社に連絡し、株式の名義変更を行いましょう。

預金の場合
贈与された財産が銀行等の預金口座の場合は、預金口座の名義変更の手続きが必要となります。

ただし、預金の贈与の場合、預金の管理者が誰なのかは、非常に注意が必要です。

贈与後の具体的なスケジュール例

贈与が行われた後の具体的なスケジュールは、以下のようになります。あくまでも一般例となりますので、参考にご覧下さい。

①贈与契約書の作成
 
贈与契約書を作成し、贈与者と受贈者が署名・捺印します。
贈与の実行
 
贈与契約書に基づき、贈与を実行します。
財産の名義変更手続き
 
必要に応じて、財産の名義変更手続きを行います。
贈与税の申告
 
贈与税の申告が必要な場合は、申告書を作成し、税務署に提出します。

まとめ

今回は、贈与を行う際の注意点や手続きについて、紹介しました。

贈与は、生きている間に自分の意志で行うことができ、また、相続の事前対策としても有効です。

しかし、正しい手続きを行っておかなければ、後々トラブルに発展することもあります。

実際に贈与を考えている場合は、事前に専門家に相談し、間違いのない手続きを行うようにしましょう。


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