今回ご紹介する事例は、赤字が続いていたので、株価が安いを思い込んでいたことが失敗の要因になったC社の事例です。
赤字だから株価は安いと思っている経営者、後継者の方には必見の内容です。
事例の会社の主な概要
それでは、今回の事例のC社の主な概要のご紹介です。
家系図
まずは、C社の家系図から紹介します。
C社社長は、5年前に他界し、長男であるXが事業を承継。
会社の概況
C社は、業歴約35年で、先代のC社長が創業。
C社長は、5年前に他界し、70%保有していたC社の持ち分は、二次相続を考慮し、後継者である長男Xが承継し、自宅と賃貸不動産は母C’が相続した。
C社は、以前は業績は安定していたが、コロナ禍による業績低迷で、この3年間は赤字が続いている。
会社名:C有限会社
業種:不動産業
事業承継:後継者は長男のX
事業承継(株式移転)の内容
今回の事例では、経営の承継というよりは、株式の移転の方法についてです。
C社長が亡くなった後、後継者のXが70%を、残りの30%を母C’が保有しており、C’が亡くなった際の二次相続を考慮し、赤字が続いている今のうちに、C社の持ち分のうち10%を、Xへ贈与することとした。
この贈与により、Xは、C社の株式評価を会社区分より「中会社の大」として評価(類似90%、純資産10%)し、適正に贈与税の申告書を作成し、申告・納税を行った。
なお、会社区分に関するブログは、以下で紹介しています👇
https://note.com/embed/notes/n6384f848ea51
今回のポイント
今回のC社における株式移転のポイントですが、株式移転を行った際の価格(株価)についてです。
株価評価の基本は、「類似」と「純資産」
株価評価については、主に「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」の2種類あり、一般的には「類似業種比準価額方式」の方が安くなると言われています。
そこで、問題になるのが、この「類似」と「純資産」のどちらの方法で株価を計算するのかという事です。
今回のC社の事例では、「類似業種比準価額方式」のみで計算してしまっていたことが問題となります。
類似業種比準価額方式の計算方法
まず、類似業種比準価額方式の計算ですが、以下の3要素で構成されています。
◆3要素
・配当
・利益
・純資産
上記の3要素について、上場企業と比較し、株価を算定します。
よって、この3要素(配当・利益・純資産)について、上場企業と比較をし、評価を行う会社の方が低ければ、株価も低く算定されるように計算式が成り立っています。
よって、赤字の場合は、利益の要素がマイナスとなることから、ゼロで算定されるため、株価も低く評価されるのです。
類似業種比準価額方式の詳しい内容をお知りになりたい方は、以下のブログをご覧下さい👇
純資産価額方式の計算方法は、こちらのブログです👇
https://note.com/embed/notes/ne1b92303f1fa
注意が必要な「比準要素数1」の会社
では、なぜC社の株価算定が問題になるかというと、「比準要素数1」の会社には、特別な計算式が定められているからです。
C社の状況は、以下となります。
・配当:無配当なのでゼロ
・利益:赤字なのでゼロ
・純資産:資産超過の為、プラス
C社の場合は、3つの要素のうち2つの要素がゼロとなっている状況で、プラスになってるのが純資産の1つだけです。
このような会社は、比準要素数1の会社に該当し、類似と純資産の比率は以下となります。
◆比準要素数1の会社
類似業種比準価額方式 25%
純資産価額方式 75%
つまり、C社の株価評価は、類似を90%使えると思って計算していたが、25%しか使うことができず、株価が過少に評価されていたことになります。
これにより、長男Xは、贈与税の修正申告を行い、本税に加え延滞税を納税することとなった。
まとめ
今回の事例では、中小企業の株価算定方法の誤りにより、追加で納税が必要となったお話でした。
中小企業において、配当を継続的に支払って会社は稀で、配当の要素がゼロになることが多いです。
よって、業績が一時的に悪化し、利益がマイナスになると、特殊な計算方法が適用され、思っていた以上に株価が高くなることがあり得ます。
C社のようにならないためには、毎期、継続的に株価を算定し、常にチェックしておくことが重要となります。
また、株価が高いと思った際は、長い期間をかけて株価をコントロールするよう検討しましょう。
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