「背中を見て覚えろ!!」は、職人の世界の伝統と思うでしょう。
親方の背中を見て一人前になるのが当然の修行だと思われた時代が続いてきましたが、それが今までの日本の当たり前だったんですが、それも大きな変革期に差し掛かっているようです。
今回は、技術の伝承について考えていきます。
産業別に見た65歳以上の人数
まずは、現状の日本における産業別高齢者の就業者数を見ていきます。
こちらのデータ、2013年と2023年の10年間での65歳以上の就業者数と割合を示しています。
労働者数で多いのは、卸・小売業
まずは、労働者数の上位3つを見てみます。
1. 卸・小売業:132万人(12.7%)
2. 医療・福祉:107万人(11.8%)
3. サービス業:104万人(22.7%)
割合が高いのは、農・林業
次に、割合が高い産業です。
1. 農・林業:52.9%(99万人)
2. 不動産業:26.6%(37万人)
3. サービス業:22.7%(104万人)
上昇率が多いのは、サービス業
3つ目は、割合の上昇率が高い産業です。
1. サービス業:+6.3%(7人に1人→4人に1人)
2. 建設業:+6.2%(10人に1人→7人に1人)
3. 農・林業:+6.1%(2.1人に1人→1.9人に1人)
この3つのデータから、
・就業者数が多く
・高齢者割合の高い
・割合が上昇し続けている
産業は、高齢者への依存度が高く、早急の対策をしなければ、衰退していく事がわかります。
問題なのは、プラスで特別な技能が必要な場合
ここで問題なのは、その産業が高齢化している事ではなく、「高齢化+特殊技能」というこの二つの要素が合わさった場合と私は考えます。
当然、どの産業でも技術や技能・ノウハウは必要で、簡単に引き継げるものでない事は、理解しています。
また、システム化により解決の糸口が見つかる産業もあるでしょうし、その逆もあるでしょう。
ここでキーワードになるのは、「技術の言語化」です。
言語化というのは、すべてを1から10まで文字に落とし込めというものではなく、動画でもいいでしょうし、マニュアルでもいいでしょう。
要は、若い世代に引き継いだ後のヒントになればいいと考えます。
背中を見て覚えろは、現代でも通用するのか?
日経新聞での記事にもなっていましたが、「背中を見て覚える」のは、現代では難しくなってきていると思います。
若い世代の人に、何も説明せず、見て覚えさせることは不可能で、その状態を続けて来た結果が、先程のグラフに現れていると言っても過言ではない状況です。
若い世代を巻き込むには、分かりやすい表現が必要なのです。
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世の中には、知っている事前提の資料が多すぎる
私自身、現在業務委託の仕事を受けるのに、リモートで研修を受けています。
その資料が、見た目は綺麗に出来ていますが・・・
非常に不親切・・・
説明がどこにもないから、調べようがない。
すべての資料のスタンスが、「これ位は、知ってて当然でしょ」という風に作られているので、初めて見た人にも親切で読みやすくという観点が完全に抜け落ちています。
こんな資料、世の中に山ほどあります。
背中を見て覚えられるのは、自分でやった事がある人
そもそも、背中を見て覚えられるのは、自分でやってみて、師匠や先輩の出来と比べて劣っている事に自ら気付けた人ではないのでしょうか。
仕事が一通り把握出来ていて、人並みにはできるようになったけど、もう一つ上のレベルに到達する為には、どうしたらいいのかと考えられるレベルにある人だと思います。
そうすると、これから新たにその業界に飛び込んでくる若者に対して、「見て覚えろ!!」は、やはり乱暴で時代には合っていません。
そうすると、言葉では伝えにくい「手の感覚」や「職人の勘」は、動画で残すことが、今の近道ではないかと思います。
もちろん、言葉で伝える事が出来る場合は、細やかに伝え、フィードバックを行う事が重要です。
早くから、役割をもってもらう
そして、若い世代には、早く役割を与える事が大事と考えます。
建設業であれば、現場でのドローン操縦による測量や工程管理の役割を担ってもらいます。
製造業であれば、操縦が比較的簡単な汎用機を操縦し、売上げに貢献してもらいます。
農業であれば、小さくてもすべての工程を一から行い、収穫の喜びを体験することも重要です。
このように、早くから役割があることが重要だと考えます。
まとめ
今回は、日本における伝統的な「技術は見て盗め」について、紹介しました。
これから人口減少が進む一方、未来に伝承し続けなければいけない産業があるのも事実です。
その為には、若い世代がのびのびと能力を発揮してもらえる環境の整備が不可欠です。
日本の伝統技能が、若い世代に引き継がれる未来に対して、現役世代がやらなければならない事は、まだまだたくさんあると私は考えます。
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