今回ご紹介するのは、
M&A促進税制について、
新たな拡充案を日本経済新聞の記事より
紹介していきます。
後継者難に伴う拡充で
新たね税制改正に盛り込まれる
予定となっています。
そんなM&A促進税制の
従来の内容と新たな拡充案について、
解説しますので、
事業承継を検討すべき経営者の方や
M&Aを考えている方は必見です。
2024年度税制改正 後継者難の中小企業でM&A促進、全額損金算入 – 日本経済新聞政府・与党は2024年度税制改正で中小企業のM&A(合併・買収)に関する税負担を軽くし、後継者不足の問題の解消につwww.nikkei.com
従来のM&A促進税制とは?
それでは、そもそもM&A促進税制とは何?
から解説していきます。
どんな制度?
こちらの制度、M&Aによって
生産性向上等を目指す、
経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、
計画に基づいてM&Aを実施した場合に
以下の二つの措置が受けられます。
① 設備投資減税(中小企業経営強化税制)
② 準備金の積立(中小企業事業再編投資損失準備金)
あくまでも「経営力向上計画」を
受けている中小企業が大前提となります。
では、ひとつづつ解説します。
◆設備投資減税
経営力向上計画に基づいて、
M&A後に取得し、
M&Aの効果を高める設備の導入
により、以下の税制優遇があります。
① 投資額の10%を税額控除
② 全額即時償却
設備導入により、選択できるのは、
・投資した金額の10%の税金を安くしてもらう
・投資した金額の全額を減価償却費として計上
の二つです。
仮に、500万円の設備を導入するなら、
・500万円×10%=50万円→税金が安くなる
・500万円→減価償却費を計上する
となります。
◆準備金の積立
事業承継等事前調査に関する事項を記載した
経営力向上計画の認定を受けた上で、
計画に沿ってM&Aを施した際に、
M&A実施後に発生し得るリスク(簿外債務等)に
備えるため、投資額の70%以下の金額を、
準備金として積み立て可能
となっています。
なんだか難しく書いてありますが、
要するに、M&Aで投資しても
今後リスクが発生するかもしれないので、
それに備えて、あらかじめ損失計上しても
いいですよという制度です。
その金額が、
投資した金額の70%以下と
なっています。
中小企業庁:経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用についてwww.chusho.meti.go.jp
この制度の効果は?
では、この設備投資と準備金の
効果を考えてみましょう。
まずは、設備投資です。
「税額控除」は、その設備を購入した年の
法人税額が安くなって終わりです。
よって、単純にその年だけのお話で
翌年度以降に何の影響も与えません。
一方、「即時償却」と「準備金」は
翌年度以降に影響があります。
いわゆる、課税の繰り延べってやつです。
では、まずは即時償却から。
◆前提条件
設備投資額:500万円
減価償却:5年(定額法)
◆通常の減価償却費
1年目:100万円
2年目:100万円
3年目:100万円
4年目:100万円
5年目:100万円
◆即時償却による減価償却費
1年目:500万円
2年目: 0円
3年目: 0円
4年目: 0円
5年目: 0円
と、このように減価償却費を
1年目に全額計上しているだけで、
5年間の総額は変わりません。
当然と言えば当然ですが、
投資した金額より多い減価償却費が
認められる制度は、どこにもありませんので、
ただ単に時期が早くなっただけの事です。
次の「準備金」も基本は一緒です。
◆前提条件
M&Aで、1,000万円投資
70%の700万円を準備金として積立
◆準備金による所得の推移
1年目:▲700万円
6年目:+140万円
7年目:+140万円
8年目:+140万円
9年目:+140万円
10年目:+140万円
こちらも、1年目に700万円の
所得減は図れますが、
M&Aによるリスクが何も発生しなければ、
5年据え置き後、140万円ずつ所得が増加し、
10年で見れば所得の影響は0円で、
何も所得に変動はありません。
ですので、「即時償却」と「準備金」には、
税金を安くする効果はない事がわかります。
本当の節税は、税額控除
少し話は脱線しますが、
実は世に出ている節税の大半は
この「課税の繰り延べ」です。
費用処理(税務上は損金計上といいます)の
時期が前倒しになるので、
得したように錯覚しますが、
実は所得金額は何も変わっていません。
でも、世の中には
平気で「節税」と言っている人が
いますので、情報整理を行い、
安易に導入しないようにしましょう。
本当の節税は、
「税額控除」のみです。
新たなM&A促進税制の改正案
現状での新たな改正案は、
「準備金」が検討されています。
改正案は、以下の通りです。
◆中小企業が中小企業をM&A
・1社目:70% → 変更なし
・2社目:70% → 90%
・3社目:70% → 100%
中小企業については、
2社目・3社目のM&Aについて、
それぞれ率が上昇する予定となっております。
また、中堅企業(従業員2,000人以下)についても
新たに優遇が検討されています。
こちらは、先程も言いましたように、
課税の繰り延べでしかないので、
税金が安くなることは、ありません。
しかし、投資した年に
多額の費用(損金算入)が認められますので、
黒字企業の場合は、その分の
納税が抑えられ、資金繰りの面では
メリットがあります。
よって、利用の際は、
いずれ税金がかかることも念頭に
資金繰りの面で検討しるようにしましょう。
まとめ
今回は、M&A促進税制について
ご紹介しました。
M&Aによる投資直後は、
多額の資金流出による
資金繰りに苦労することも
想定されますので、計画的な
資金調達の一つの手法として
上手に活用するようにしましょう。
しつこいようですが、
税金は安くなりませんので、
そこは誤解ないようにしましょう。