今回ご紹介する案件は、高齢社長の死亡時の会社の未来と保障不足により、遺族が思わぬ対応に迫られることになった事例の紹介です。
ご家族に経営者のいる方で、会社経営に携わっていないので関係ないと思っていても、ある日突然、対応が必要になることに・・・
経営者の方やそのご家族の方、必見の内容です。
事例の会社の主な概要
それでは、今回の事例のD社の主な概要のご紹介です。
家系図
まずは、D社の家系図から紹介します。
D社社長は78歳で、後継者が不在で、将来はM&Aにより会社を譲渡する予定にしており、M&Aの可能性を模索中に心筋梗塞で死去。
妻D’73歳、長女X56歳、次女Y53歳は、D社の経営には一切関与していない。
会社の概況
D社は、D社長が創業。
D社長は、100%保有していたD社の持ち分について、D社長の遺言書はなく、相続人である妻と二人の娘が遺産分割協議により引き継ぐ事になるが、会社経営に関わっておらず、突如、事業承継問題と向き合う事になった。
D社の業績は、安定した利益を計上している。
会社名:株式会社D
業種:食品製造業
事業承継:一旦、長女Xが引き継ぎ
従業員数:23名
事業承継の内容
D社長が亡くなり、相続人である家族は、創業以来D社長を支えてきた専務(72歳)が会社を引き継いでくれると思っており、専務が引き継いでくれるなら価格はいくらでも全株式を譲渡するつもりであったが、専務は地震も高齢であることから、相続人の想いは届かなかった。
また、D社社長死亡時に、メインバンクの借入金が1億円あり、そのうち7,500万円はD社長が連帯保証人となっていたことから、早急に新しい代表取締役を決定し、今後の経営陣の体制を整えるよう要請があった。
なお、実質的にはD社は、D社長が一人で切り盛りしており、役員退職金規程も整備されていなかった為、役員退職金の支給もなく、唯一個人で加入していた生命保険金2,000万円の終身保険があるのみであり、妻D’の今後の生活費についても、妻D’は不安を抱いていた。
後継者を経営に携わっていない長女が承継
D社の後継者について、当面の舵取りができる代表者を定める必要性があることから、専務と顧問税理士とともに協議した結果、専務とも小さい時から顔なじみである長女Xが引き継ぐ事になり、専務のバックアップの元、経営をすることになった。
従業員23名とともに会社を買い取ってくれる相手先企業を探すことになったが、なかなか思い通りの売却先が現れず、最終的な譲渡が成立するまでに3年を要することとなった。
今回のポイント
では、今回のD社における事業承継のポイントを見ていきます。
失敗の要因
今回の失敗の要因は、78歳の高齢にもかかわらず、死亡時の対策を怠っていた事です。
中小企業の経営者の場合、主に以下の2つの対策が必要です。
・ 会社の後継者
・ 経営者の遺族の生活保障
後継者の選定は、万が一が起こってからでは手遅れ
もし、社長に万が一の事が起こった場合に、「どんなことが起こるのか?」を皆さんは考えられたことありますか?
・会社の経営をどうしていくのか?
・借入金の保証は、どうするのか?
・相続税は、いくらなのか?
・遺族(特に、配偶者)の今後の生活保障は?
などなど、検討する事は、山ほどあります。
今回のD社長のケースでは、後継者の事も遺族の生活保障の事も何もケアされておらず、妻や娘たちは、会社の経営に全く関与していないにもかかわらず、突然、会社の運営に携わることになりました。
また、M&Aを考えていたのに、生前は具体的に売却先の選定を行う事もなく、時間がだけが過ぎている状態であった。
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今回のD社のケースでは、会社経営に関与していない相続人に経営を任せる事は現実的ではなく、D社長が元気なうちに、会社の方針を決定し、その方針に従って適切な準備をしておく必要がありました。
また、なかなか買い手が決まらない事もある為、相続人には、いざ相続が発生した際に、株主として経営に関わる可能性を事前に説明しておき、万が一の際に想定される課題や対処方法を、D社長が元気なうちに共有しておくことも重要です。
その為には、一番身近な顧問税理士が社長と家族の間に入り、情報を共有する等の対策が必要です。
経営者の遺族の生活保障も、重要な課題です
また、加えて、妻D’は、今後の生活をするのに、D社社長の役員報酬も途絶え、かつ、役員退職金の支給もないことから、当面の生活費は、今までの貯蓄と生命保険金及び年金という事になります。
このように、遺された遺族のうち、亡くなった方と生活を共にしていた人であればある程、影響を強く受けます。
その場合、亡くなられた後の生活費の確保は、遺族にとって非常に重要な課題であり、ライフプランと資金計画をリンクさせ、必要な準備をしておくことが必要です。
中小企業の経営者の場合、会社経営と共に、遺族のライフプランも重要であり、万が一の資金計画も重要です。
FPなどのライフプランの専門家を交え、必要な保障を確保しておくようにしましょう。
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まとめ
今回の事例では、中小企業の事業承継と相続対策について、準備不足が招いた遺族の負担について、紹介しました。
中小企業において、経営者が亡くなる事は、会社経営の未来と残された遺族の未来の二つの未来をバランスよくケアする必要があります。
その為には、顧問税理士やFPなどの専門家を交え、然るべき対策を行っておく必要があり、引いては、遺族が突然、対応に迫られる事も防ぐ事ができます。
何事も、事が起こってからでは「手遅れ」です。
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